IoTとは、「Internet of Things」の略で、通称「モノのインターネット」と呼ばれます。
モノのインターネットとは、私たちが日常において使っている「モノ」自体がインターネットに接続する状態のこと。たとえばテレビやエアコン・電子レンジ・冷蔵庫などの家電や、自動車などの乗り物や、信号機などの公共の設備などが、インターネットに接続する状態を指します。
従来のインターネットは、パソコンやスーパーコンピューター、サーバーなどを結ぶ通信を意味していました。しかし、近年ではパソコンやルーターといったIT設備以外のデジタル機器、たとえばデジタルカメラやスマートスピーカーといったデバイスがインターネットに接続する機能はすでに一般的になっています。
ですが、こうしたデジタル機器がインターネット接続することをIoTとは呼びません。こうしたデジタル機器にとどまらず、身の回りのあらゆるものがインターネットに接続するようになる状態をIoTと呼ぶのです。将来的には、インターネットに接続するイメージのないもの、たとえば紙のノートやペンといった文房具、服やメガネといった服飾品などもインターネットに接続する未来が来るかもしれません。
IoTの仕組み
IoTの仕組みは、「IoTデバイス(センサー)」「ネットワーク(クラウド環境)」「アプリケーション」の3つで成り立っています。
IoTデバイスはモノ自体を指し、その多くは何らかのセンサーを搭載しています。IoTデバイスに使用されるネットワークは基本的には電波を用いた無線通信で、多数のIoTデバイスを管理するクラウド環境(クラウドサーバー)と接続します。アプリケーションとは、そうしたクラウド環境に送信された情報を元に、データを整理したり状態を遠隔管理・リモート操作したりできるツールのことです。
IoTデバイスに搭載されたセンサーを介して発信されたリアルタイムな情報を、ネットワークを介してクラウドサーバーに蓄積し、蓄積されたデータをアプリケーションと同期することで、アプリケーション側で操作や調整を行う。これが、IoTの仕組みです。
IoTで何ができるのか
それでは、具体的にIoTで何ができるのかを見ていきましょう。
IoTでは、以下のようなことができます。
1.モノを遠隔操作する(コントロール)
2.モノの状況・状態をリアルタイムで把握する(モニタリング)
3.IoTデバイス同士が相互通信を行う(シンクロ)
1.の遠隔操作は、たとえばスマートフォンのアプリケーションを使って自宅のエアコンの温度調整やオン・オフ操作を外出先から行ったり、掃除ロボットを作動させたりといったことです。
2.のモニタリングは、たとえばバスや電車などの公共交通機関の走行位置をリアルタイムで把握したり、工場の生産ラインでの在庫量や機器の故障をリアルタイムで把握することが挙げられます。より身近な例としては、医療の現場でウェアラブルデバイス(着脱可能なセンサー機器、たとえば手首に巻くことで脈拍や血圧を計測するセンサーなど)を介して患者さんの状態をリアルタイムに把握したり、データを収集して健康管理をしたりすることが挙げられるでしょう。
3.の相互通信は、自動運転車同士で相互に通信しあって衝突などの危険を事前回避することなどが挙げられます。
IoTを活用すれば、以上のようにより細やかでリアルタイムな需要に適した機器の稼働が可能になり、レスポンスの良い便利なサービスを提供できるのです。
5GとIoTを組み合わせることで、ますます便利な社会が実現する
IoTは、現在構築が進められている新世代の通信システム「5G(第5世代移動通信システム)」との相性が良く、これから到来する5G社会に向けてあらゆるモノのIoTデバイス化が進められています。IoTと5Gの相性が良いというのは具体的にどういうことなのでしょうか。
5Gの特徴として「高速で大容量の通信が可能」「非常に低遅延な通信が可能」「同時多数接続に強い」点が挙げられます。これらの特徴は全てにおいてIoTと親和性が高いのです。総務省の資料でも、以下のような記述で5GのIoTへの活用が言及されています。
5G は、4G など従来の移動通信システムと比較して、「超高速」、「超低遅延」、
「多数同時接続」であるという特長を有しており、IoT 時代の基盤技術として、
様々な産業分野での利活用が期待されている。
引用:総務省資料「IoT・5G セキュリティ総合対策 2020(令和2年7月改訂)」
IoTデバイスが急速に普及しあらゆるモノがインターネットに接続しデータを発信するようになると、その通信量は膨大な容量となりますが、4Gより遥かに高速で大容量の通信ができる5Gを活用すれば、過度な負荷をかけることなくIoTデバイスを活用できます。そして、リアルタイムでのモニタリングやIoTデバイス同士のシンクロにおいて故障などのトラブルが起きた際には早急な対処が必要になりますが、低遅延通信が可能な5Gはそうした場面においては欠かせないものとなるでしょう。
また、IoTが普及すると、通信を行うIoTデバイスは莫大な量となります。こうした時に、4Gのおよそ10倍ともいわれる同時多数接続が可能な5Gがあることで、接続不能なデバイスが生まれるリスクを最大限に回避できるのです。
現在では不完全な5G、すなわちNSA(ノン・スタンドアローン)方式の5Gが少しずつ普及している段階で、まだ本来の5Gの実力を活かすのは難しい状況となっています。しかし将来的に、以上のようなIoTと親和性の高い特徴を備えた完全な5G、すなわちSA(スタンドアローン)方式の5Gに置き換わったときにこそ、完全なIoT社会が実現できると考えられるのです。
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